新築の間取りを検討する際に、重要になるポイントのひとつである、収納スペース。
「ウオークインクローゼット」は新築において定着化しつつありますが、最近トレンドになりつつある「ウォークスルークローゼット」という収納スペース。
どちらも人が収納スペースに入れるのですが、「ウォークインクローゼット」と何が違うの?!と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
それぞれの違いやメリット・デメリットを含めて事例をもとにご紹介します。
①ウォークスルークローゼットって何!?
人が通り抜けられるクローゼットのことを「ウォークスルークローゼット」と呼びます。そのクローゼットへの出入り口が2か所以上あり、それぞれ別の場所に通じています。生活動線や家事動線上に収納スペースを設けている場合が多く、出入り口には扉をつける場合もありますが、動線が途切れない方が便利なので、扉を付けないか、付けても引戸で普段は開けっ放しにできるようにする場合が多いです。そのためウォークスルークローゼットがある家は、総じて室内をぐるぐる動き回れる回遊性のある間取りになります。
②ウォークスルークローゼットとウォークインクローゼットとの違い
前述したように、どちらも人が入れるタイプのクローゼット。大きな違いは、通り抜けできるかどうかです。
つまり、ウォークインクローゼットが収納だけに特化したスペースであるのに対し、ウォークスルークローゼットでは動線を組み合わせた、通り抜けできる収納スペースであるということです。ウォークインクローゼットの出入り口は1つですが、ウォークスルークローゼットの場合は2つ以上です。クローゼットに入る部屋とクローゼットから出る部屋が違うということが、ウォークスルークローゼットの最大の特徴といえるでしょう。
写真のようにウォークインクローゼットは収納専用スペースなので外からは見えにくい閉鎖的なスペースに、ウォークスルークローゼットは生活動線の中に組み込まれることが多いので開放的なスペースになります。
③ウォークスルークローゼットのメリットとデメリット
- メリット
ウォークスルークローゼットは生活動線上に作られた収納スペースなので、その配置の仕方によって、作業動線が短くて済むため効率的な間取りになります。
ウォークスルークローゼット内に複数出入口があるため、家の中をぐるぐる回遊できる動線になり開放性が生まれます。開放的な収納スペースなので「見せる収納」となり、インテリア性の高いおしゃれなスペースを演出できるでしょう。
また、通り抜けできるので、風や光を取り込みやすいため、衣類など収納するものがカビが生えるといった心配も少なく、収納環境にも一役買うことでしょう。
- デメリット
ウォークスルークローゼットは通路も兼ねているため、同じ大きさのウォークインクローゼットと比べるとその分、収納量が少なくなります。間取りによってウォークインクローゼットを選ぶか、ウォークスルークローゼットを選ぶか、生活動線を検討してから選択しましょう。
そして、前述のメリットが裏を返せばデメリットにもなってしまうことがあります。
開放性が高いウォークスルークローゼットは目につきやすくなるので、「見せる収納」が苦手な方には整頓されていないような煩雑な光景を普段よく目にすることに。。来客時の動線上にありお客様の目にも入る場所にあるとより注意しなければなりません。
また開放的で通気性のよいウォークスルークローゼットは、浴室や洗面室に近すぎると湿気をより含む環境に。湿気対策のため換気に気を配らないといけません。
④ウォークスルークローゼットはどこに作ればいい?
せっかくウォークスルークローゼットを作っても、使いにくくては意味がありません。何となくここに作ろうとするのではなく、必ず生活動線をふまえた上で使いやすいかどうか、シュミレーションしてから計画しましょう。ここでは事例を挙げながら詳しく検討してみます。
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玄関と洗面室の間
コロナ渦で注目された、ウィルスを家の中に持ち込まないという考えでは、玄関を入ってすぐにウォークスルークローゼットなどで外出着やバッグなどをいったん置けるというスペースが重宝します。そして洗面室にも隣接していることで、汚れなどが気になる場合はそのまま洗面台で手洗いしたり洗濯したりが叶います。
ウィルス対策だけでなく、外遊びが盛んなお子さまや部活動をしているお子さまがいるご家庭でも泥などの汚れを持ち込みにくく、帰ってすぐにウォークスルークローゼットで荷物を置いたり、着替えたりでき、しかもお風呂にも直行できればとても便利です。
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キッチンと洗面室の間
家事を効率的に考えたい場合は、キッチンと洗面室の間にウォークスルークローゼットを作ります。日常的によく着用するような部屋着を置いておいたり、洗剤や掃除用品を収納したり、またキッチンの横にあることで食材のストックを置くパントリーとしても兼用でき、省スペースながら多目的に活用できます。
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玄関とリビングの間
写真は玄関からリビングに向かう廊下に設置したウォークスルークローゼットの事例。帰宅してコートやバッグなどを置いておくことができ、出かける際にもここで身支度ができます。
この事例は1階のほぼ中央にウォークスルークローゼットがあるため、洗面室にも隣接しており、手洗いや汚れなどすぐに落とすことができ、ウィルス対策にもなっています。
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2階ホール
2階のスペースに余裕がある場合におすすめなのが、ホールに配置したウォークスルークローゼット。各部屋からの動線上に配置すると家族で日常的に使う衣類などの収納スペースとして重宝します。
この事例では、ウォークスルークローゼット内に室内干しができる竿を設置しているので、お天気が悪いときの室内干しに、急に雨が降ってきたときの一時的な干し場所として活躍します。
またすぐ横に家事のためのカウンターを設置しているので、取り込んだ洗濯物をここで畳んだり、アイロンしたり・・そして、そのままこのウォークスルークローゼットに収納できます。
ママが家族みんなの洗濯物を各部屋に持っていく必要がなく、ここで普段の衣類などの管理ができます。「ここに家族みんなの洗濯物を置いておくから、各自お部屋に持っていってね」とルール付けしてあげると、ママの家事の負担も減り、お子さまの自己管理能力も育てられます。
⑤まとめ
新しい収納の形、ウォークスルークローゼット。その役割を十分に生かすのも、動線次第です。意外とスペースをとられることもあるので事前によく検討してから配置しましょう。それぞれご家族の生活スタイルに合った収納の形がありますので、使い勝手の良いウォークスルークローゼットを導入してみてはいかがでしょうか。
設計・インテリアコーディネーター F.A